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詩のようなものを書いています。
気が向いたときにぽつぽつと。
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2018.05.22 Tuesday 
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トレード コース1・『出会い』4


「うわっ」
 思わず叫んで、距離をとる。布団の上なので、そんなに離れられるわけではないが、気持ちの問題だ。
「おまえ、急に倒れるから。どうしたんだよ。なんかあったのか?」
(大ありだ!)
 思ったが、案の定、声は出なかった。
 また勢い良くドアが開いて、さっきのオバサンが入ってくる。
「まったく、なに考えてるの。寝間着のまま飛び出してったと思ったら、玄関前で卒倒するなんて!もう、これからご近所でいい笑いものよ」
 オバサンは、水の入ったコップと、何か薬のようなものを乗せたお盆を、ベッドの横に備え付けてあるボードに置いた。それから、ベッドの横に座っている好青年に笑顔を向けた。
「ケイくん、ありがとね。ほら、あんたもお礼言いなさい。ケイくん、学校休んでまであんたの面倒みてくれたのよ。ごめんねー、ケイくん。せっかくの誕生日なのに。ほんとにこの子ったら、バカなんだから」
「いいんですよ、おばさん。成り行きだし、今日はもともと半ドンだったから」
 好青年は、見た目どおりホントに好青年な受け答えをして、屈託なく笑った。
「悪いわねー。それで、悪いついでにね、あたしこれからパートにいかなきゃなんなくて…。ケイくん、この子の様子見てあげてくれない?一応、薬もここに置いて行くから。ほら、その方がこの子も嬉しいだろうし。ね、チヨ」
 意味深に笑うオバサンに、おれはわけがわからず、はあ、というだけだった。
 それをどう解釈したのか、オバサンは満足げに頷いて「じゃあね」と上機嫌に出て行った。
 後に残されたのは、おれと好青年。
 しばらく何を言ったものか迷って、黙りこくっていた。好青年……「ケイくん」の方も何故だかむっつり黙っている。あんまり長い沈黙にたえかねて、おれは、あの、と切り出した。
 だが、切り出したはいいが、言葉が出ない。
 だって、なんて言えばいいんだ。
「なに?」
 二の句がつげないでいるおれに、「ケイくん」は訝しげな視線を向ける。
「なんか、おまえ、おかしくない?なんでそんな、きょどってるわけ」
 疑うような目に射抜かれて、答えられないでいると、「ケイくん」はひとつため息を吐いた。
「チヨ。なんか悩みあるなら、言えよ。ヨウスケのことだって、おれに何にも言わないで、勝手に行動するから、あんなことになったんだぞ」
――ヨウスケ?あんなこと…?………チヨ?
 何の話をしているのか、さっぱりわからない。
(あれ?)
 ちょっと待て。話が見えないながら、耳を傾けていて、名前の往来にはた、と気がつく。
(チヨ?)
 そうだ、ここで目が覚めてから、会った人間は皆、自分のことを「チヨ」と呼んだ。
「チヨ?聞いてるのか」
――チヨ。
 おれが、「チヨ」?そんなわけはない。おれは……。
「かがみ」
 熱に浮かされたような声がでた。高い声だ。声が裏返っているのだろうか。
「ケイくん」が意表を突かれたように聞きかえす。
「え?」
「かがみ、どこ!」
 叫んだ。嫌な予感が、全身を這い回る。
「やっぱ、おまえおかしいぞ。鏡ならそこにあるだろ」
 そう言って「ケイくん」が指差したのは、さっきオバサンがお盆を置いたボードだった。お盆の横に、折りたたみの鏡がおいてある。
 ひったくるようにして鏡を掴んだ。手が震える。だって。まさか。
(まさか――……)
 恐るおそる、鏡を開く。きらり、と光る鏡が、おれの姿を映し出す。
 明るい陽光の差し込む部屋のなか、おれは鏡を手にして固まった。
 なんでだろう。暖かい光が差し込んでいるのに、寒い。寒気がする。
「うそだ……」
 そこに映っていたのは、おれじゃなかった。
 すこし細面で、きりりとした釣り目の少女。理性的で賢しい顔立ちだが、まったく見たことのないその少女が、鏡の中で顔面蒼白になって固まっていた。
 おれなのに、おれの顔じゃない。ていうか、性別まで違ってる。
(こんなことって、あるか。どうして。なんでこんなことになったんだ)
 混乱する頭で、考える。どこから、こんなことになったんだっけ。
 ふいに、こととん、こととん、という音が脳裏に蘇った。
(そうだ、電車だ)
 電車に乗って、徹夜でレポートして、うたたねして……。それから?
 そういえばあのとき、何かが大きく揺れた―――…。

「チヨ!」
 肩をつかまれた。鏡を見つめたまま固まっていたおれを、「ケイくん」がグイと引き寄せる。
「どうしたんだよ、チヨ。しっかりしろよ、ホントに変だぞ」
 心配そうな顔で見つめてくる。そうだ、「ケイくん」は多分、悪くない。だけど、いまのおれはそれどころではなく、人のことまで考えている余裕は無かった。おれは摑まれた肩を振りほどき、ちからいっぱいに叫んだ。
「おれは、チヨじゃない!」
 大音量で響き渡ったおれの怒声に、「ケイくん」は日焼けのせいで白く浮いて見える目を、いっぱいいっぱいに見開いた。
「なに、ゆってんの……?」
 気持ち悪いものを見たような顔になった「ケイくん」は、次には呆れたような口調になった。
「冗談なら、もっとうまく言えよ。笑えねーぞ。それで陽介のこと、はぐらかしたつもりかよ」
 明らかに信じていない「ケイくん」に、おれはなおも不当な怒りをぶつける。
「だから!おれはチヨとかって名前じゃないんだよ。ヨウスケってやつも知らねえ。ついでに言えば、おまえのことだって、おれは知らねえ。おれは東京の大学生で、電車で、明日、実家に帰る予定で」
「わけのわかんないこと言ってんなよ!おれのこと馬鹿にしてんのか」
「わけがわかんねえのはこっちなんだよ!なんでおれが女になってんだ!おまえ誰だ!ここはどこだ!おれはどうなっちまったんだよ!」
「チヨ…?おまえ、マジでどうし――…」
「わかんねえ、わかんねえよ………」
 意識が混濁する。体が前にのめって、視界が暗くなる。
「チヨ、大丈夫か。チヨ!」
 「ケイくん」が叫んでいる。身体を支えてくれているのは「ケイくん」なのだろうか?強く揺さぶられて、意識が少し戻ってくる。うわ言のように呟いた。
「おれは、チヨじゃない…」
「じゃあ、誰だって言うんだよ!」
「おれは……おれの名前、は…高坂…。高坂、夏生……」
「こうさか、なつお――?」
 「ケイくん」が呼んだおれの名前を最後に、意識はまた、深い奈落の底に落ちていった。



……トレード コース1・『遭遇』5へつづく……




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2007.12.01 Saturday 14:13
トレード コース comments(1)
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2018.05.22 Tuesday 14:13
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comment
お久しぶりです!

ちょっと忙しくて更新が途絶えていました、すみません。

今回も、トレードコースを更新です。ようやく主人公の名前がでてきましたね(笑)
まあ、ここまで来ればわかるとおり、タイトルはそういう意味でした。コースを交換って、そのまんまですね^^ ひねりがない。

まだまだ続く予定ですが、どーにも卒論が煮詰まってまして…更新は亀になりそうです(汗)

SSじゃないものもUPしたいけど…うう、時間がない…。
なんとか頑張ります…。

こんなグダグダサイトですが…来てくださっている方、本当にありがとうございます〜。
シオ 2007/12/01 2:29 PM




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