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詩のようなものを書いています。
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2018.05.22 Tuesday 
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トレード コース 1 ・プロローグ「前夜」1
 



 疲れていた。
 体が重くて、ついでに目蓋も重くて、足取りもおぼつかなかった。

 もう、蝉の声は消えていたが、地を這うようなべっとりとした暑さは、まだたっぷりと留まっている。
 空には、星もない。太陽は隠れて、ほとんど真っ黒な雲がぼやぼやと動いているだけだ。月も見えない。
 サウナだな、と思う。熱風を注ぎ込まれて、蓋をされたみたいだ。暑さが、喉のあたりから、じわじわと疲れた身体を蝕んでいく。
 
 それでも、いつものように研究室に泊まらず、家路につこうと思ったのは、実家から荷物が届くと電話があったからだ。
 久しぶりの仕送りだった。けど、急ぐ理由はそれだけじゃない。

 昨日の夜。受話器の向こう、親父がくぐもった声で言った。

「母さんの容態がな、ちいとばかし悪い。明日、土曜じゃろ。都合つけて一度、顔見せに来てやってくれんか」

 おふくろの具合は、おれが上京する前から悪かったが、親父がこんなふうに弱気なことを言うのは、はじめてだった。いやな予感がした。

「マジに、悪いのか」

 ひとことだけ聞いたが、受話器の向こうからの返事はない。けれど、それで十分だった。


 おふくろの病気は治らない。おれがまだ中学に入ったばっかりのころ、医者がそう言った。

「母さんがな、調子悪いて言うから、ムリヤリ町医者に連れて行ったんじゃ。そしたら、でかい大学病院を紹介されてな……。そこに早いうちに行けと言われた。夏生、どないしたらええ?なあ、どないしたら……」

 親父は帰ってきたおれを見るなり、それだけ言った。
 そして、その数日後。おれと親父は病院の一角にある小部屋に呼び出された。このときおれは、まだ希望を手離せずにいた。
 まさか、おふくろが。
 あんなに元気だったおふくろが、そんなすげえ病気なんかするはずがない。
――そう思いたくて、拳を膝の上でひたすらに強く握り締めていた。

 おふくろの主治医だと名乗った男は、癖なのだろうか、よれよれの自分の白衣の裾をきつく握りしめておれたちの前に座っていた。親父と他愛もない社交辞令のような挨拶をかわして、本題ですが、と黒縁の眼鏡を押し上げた。

 そして、一枚の薄い紙きれを机の上にふわりと乗せると、躊躇なく、おふくろの余命ってやつを、おれと親父に宣告したのだった。




 あの日から、もう七年が経つ。「余命はもって5年」といわれたおふくろは、医者の見立てに反してもう七年も病の床で頑張っていた。おれは金のかからない地元の国立の大学に行こうとしたが、おふくろのたっての希望で、おふくろの知り合いが勤めている東京の国立大に行くことになった。必死で勉強して、なんとか合格して、仕送りとバイトで一人暮らしもできるようになった。だけど、おふくろの病状は日増しに悪くなっていくばかりだった。

 そういえば最近、親父からの電話の回数も増えた。親父も不安なんだろう。酒好きで頑固で意地っ張りな親父だけど、おふくろのことは本当に心底大事にしていた。

 おふくろの前ではてんで猫かぶりの親父を、ガキの頃は、かっこわりい、なんて思いもしたけど、今はいい親父だなって思う。
 昼下がりの日曜、からかいあって、笑いあう。そんな二人の様子を思い出して、ちょっと笑った。





……トレードコース1・『転換』2へつづく……


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2007.11.05 Monday 21:46
トレード コース comments(1)
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2018.05.22 Tuesday 21:46
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comment

小説…のようなものはじめました。


たぶん、コメディのような、ファンタジーのような、シリアスのような、そんな話になると思います。


SSでなく続きものですが、よかったら暇つぶしにでもどうぞ。
シオ 2007/11/05 10:01 PM




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